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三人でヨーカドーへ such_Lichun 「上条さんお勤めご苦労様です」「初めてのおつかい(with_my_two)」の続きなんだよ。 今日は遊園地に行く予定だったのに、外では雨が降っていた。 美琴と、上条家の一人娘である美結(みゆ)は窓から外を覗いて、「……やまないわねぇ」「やまないかなぁー」 玄関にある弁当やリュックサックが空しい。 昨日の天気予報では快晴と告知されていたのに、今朝になって、台風が急に方角を変えたとかで外はこれでもかと言うくらい土砂降りだ。この手のハプニングは仕方がないとわかってはいても、やはり恨まずにはいられない。 上条は言う。「お前らそんなに凹むなよな。別に来週行けばいいだろ?」「……今日行きたかったんだもん」「そうよ。言うならば、好きな月間誌が今週から発売されてるのにどこのコンビニにもなくて悶々する感じよ」 ……なんとも微妙な例えだが、まあ言いたい事は分かる。上条だって残念と思っていないわけではない。「じゃあ室内で楽しめる所に行ってみっか?」「……例えばどこよ?」「んー、そうだな。ヨーカドーとかいいんじゃねーの?」 上条たちは地方住まいなのでビルなどの人工物より、森や林などの自然物が多い場所に住んでいるのだが、駅を越えれば割と大きな建物がたくさんあったりする。ヨーカドーはそのうちの一つだ。 美琴はおぉと声を小さく上げた。「いい案じゃないのそれ! せっかくの休日なのに一日家の中に閉じこもってるのはもったいないしね。美結はどうしたい?」 うーと猫のように唸った美結は、美琴の腹をその短い腕で抱きしめて言う。「あのね、ミユね、アイス食べたいの」 上条はよしと言って、「なら、昼飯は玄関で寂しそうにしてる弁当にしようぜ。食い終わったらバスでヨーカドーに行こう」 家で食べるお弁当というのもなかなか乙なものだ。 ☆「子供といえばアレだ。デパートに来たら、正式名称は不明だが、荷物を運ぶカートとおもちゃの車を融合したみたいなアレに乗りたがる。それは美結も例外ではなかった。よって上条は、美結が切るハンドルの方向に一回一回丁寧に反応してあげているのだ」「……。誰に対して説明してんのよ?」「ちなみに美琴さんは最近幸せ太りし始めてジムに通うようになりました」 してねーから! と上条の脇腹を割りと本気で抓る美琴。 痛ててと上条は脇腹を押さえつつ、「でもあれだよな。美鈴さんだってあの美貌を維持するためにジムに通ってんだろ? 金は出すから試しに行ってみてはいかがでせう? 老化は二○歳からって言うしよ」「……、」 美鈴、と聞いて美琴は少し眉を潜めた。 まぁ無理もない。 なぜなら、今年の正月に御坂宅で開かれた上条・御坂両家の合同パーティにおいて、美琴は近所の人々に散々『美鈴さん』と呼ばれたのだから。 逆に美鈴は美鈴で美琴に見間違えられた事がえらく嬉しかったらしく『ママもまだまだ二○代に見えるって事かしらねー。下手すりゃ美琴ちゃんより若く見えちゃったりして♪』と調子に乗りまくる始末。 美琴が格別老けて見える、という話ではない。 美鈴の方が若く見えすぎているのだ。 ただ、そこは複雑な女心なのである。 美琴は少し渋い表情で、「まぁ……。ちょろーっと興味はあるけどね。美結が小学校に上がるまではそんな事してる暇はないでしょ? ……と言うかアンタの安月給でジムなんて通えるわけないでしょーが」 ちなみに上条の財布の紐は美琴にがっちりと握られている。 フードパークにて。「あちゃー、結構混んでるわね。アイス屋はすいてるけど席がなさそうだわ」 ちょうど小腹のすく時間だったので、フードパークは多くの人で賑わっていた。「どわ、肉の香ばしい良い匂いがする……。なぁ? 美結はカートの中で食べさせて、俺らは立ち食いでもいいんじゃねーか?」「嫌よ。はしたない」 ……えー学生時代のお前だったら余裕でやりそうなのにと、呟く上条を無視して美琴はボリボリと頭を掻き、美結の視線にまで体勢を下げた。「あのさ美結。アンタはどうしたい? 今並ぶと一五分くらいに待つ事になっちゃうわよ。他の所で遊んでからにする?」 例のごとく、うーと猫のように唸る美結はハンドルを強く握り締めながら、「じゃあね、遊ぶ!」 こういう時、美結は我儘な子に育ちそうだなぁ、と上条(夫)は毎度危惧するのだがどうしても抗えないでいる。 可愛いので。 美琴と上条は、風船やゴムボールが山のようにある幼児用広場のちょっとした段差に腰をかけ、「こういうの学園都市には無かったよなぁ。あそこにあったのは疑似無重力空間(ハイパーエアルーム)とか能力判定ゲーム(スキルアタック)みてえなひねくれたもんばっかだったような」「あら。そんな事ないわよ? ゲーム系統はあっちとこっちでそんなに技術の差はないのよ。学園都市にいた頃が懐かしいわ。……画面でポーカー、なんていつの時代のものかしらね」「画面でポーカーだぁ? んなもんいくらなんでも学園都市にある訳ねーだろ。下手すりゃこっちにもないんじゃねーの? 記憶が滅茶苦茶な上条さんでもそのくらい分かるんですが」「あったわよ。と言うか私、そのゲームがあるゲーセンで超電磁砲(レールガン)のコイン稼いでたわけだし。あのメダルの柄カッコイイのよねー」「……オイ」 と、昔の話が長くなりそうだったので美琴は未来の話をしてみる事にした。「夕飯だけどさ、何がいい? 足りない物はここで買っていっちゃおうって思ってんだけど」 過去のホロ苦い思い出について不満を愚痴りたそうな上条は『ったく』とため息をして、「雑な性格は変わらないよな、お前。……夕飯ね。別に何でもいいよ、お前が作るもんなら」「……、」 ……はぁ、と今度は美琴が、上条に気付かれないように、小さくため息をついた。(作る側としてはこういう反応って困るのよねー。コイツだけじゃなく美結も) 腕くみをして、(何でもいいってのが一番厄介なのよ。『Q.今日のご飯何ー? A&Q.まだ決めてないけど何がいい? A.んー、何でもいいけど(ママが作りたいのでいいー)』的なテンプレートなやりとり) この場合、最終的に食事を決めねばならないのは美琴だ。これは上条と同棲してから気付いた事だが、食のレパートリィが毎日三種類ずつ削られていくのは意外ときつい。しかもラーメンとか餃子とかカレーとかスパゲッティーとか唐揚げとか印象深い物(カロリーがたかいもの)を二週連続で作ると『あれ? これ先週出なかったっけ?』と舌と腹が覚えているのか微妙な評価をされてしまう(と美琴は思っている)し、持ち合わせで作ると『(持ち合わせの割には)うめえな』と思われる(ような)気がするので、毎日の食事を考えるのは本当に大変な事だと思う。(……ちくしょー。カレーは先週使っちゃったし、コイツ好物の唐揚げ&胡麻だれサラダコンボは先々週のコイツの誕生日の時に作ってる……) 美琴はその美貌が崩れる程眉をしかめて、(くっ……、ここはダメ元で美結の意見を参考にしてみるか? でもあの子は基本『ママが作りたいのでいいー』としか言わないのよねー……)「う、ぅぅううううぅぅぅぅうううううううぅぅうぅうぅん……」「? おま、なに知恵熱出してんだよ?」上条は、足元にある風船くらいの柔らかさをしたゴムボールを美結に下投げでそっと投げつけると、「ぬが」「そういえばさ、……もうちょっとで『アレ』だけど。オメェ覚えてる? 美結、俺だぞー」 肩あたりにボールを当てられた美結が腹を立て、上条に復讐すべくゴムボールを大量に投射していく。 美琴はそれをガードする上条の方に顔を向け、「『アレ』? えーと、……何だっけ? もうちょっとって事は立春辺りの行事?」「そうそう。一つの節目をつけるのに相応しい時期、とでも言っとくか。……美結、ちょっとやりすぎ―――って痛あッ!? 今のゴム質のボールで出せる威力じゃねえぞ!? ちょ、やめて美結ちゃん! 上条さんが悪かったです! ついでに言うとヒントは時間を飛び越えます!!」「時間を飛び越える……? なにそれ。魔術?」「ありゃ? お前分かんねーの?」上条は痛てえ痛てえと美結に笑いかけ、「美結、俺が悪かったって。仲直りして指切りしようぜ」「……パパ意地悪しそうだからヤダ」「そんな事ないからさ。パパは美結ちゃんの事を騙したりしませんよ?」「……、」 美結は上条を少し睨みつけ黙り込むと、とてとてと上条ではなく美琴の腹にダイブした。「あ、美結……」「あーらら、アンタ嫌われちゃったわね。ほら美結、私はコイツみたいに意地悪な事しないわよー。ナデナデー」「……ふにゅ」「……。」 上条は思う。何と言うか、安心するなぁと。 美結の様子はまるで、縁側に正座で居座るおばあちゃんの太ももの上に身を丸くして居眠りする子猫のような―――、「痛てて!? 何しやがるお前!? 抓るんはいいが一緒に電気流すのはやめてくれって!! つか何も言ってねえだろが!!」「……いや、何となく。『おばあちゃん』って言われたような気がしたからさ」 わぁーこれって以心伝心! と上条がヤケクソ気味に夫婦愛を確認した所で、「タイムカプセルね、アンタが一七になった頃埋めた」 ……何だ覚えてるじゃんと、上条は答えた。 はははと、かつて何かを守って何かを失う少年だった上条当麻は、一児の父親として渋く笑った。「まぁーさ。……結局忘れてたよ。……お前は夢を叶えたのにな。そういうのを差し引いても、何せ一○年前だ。先々週だっけか。誕生日すっぽかして行った飲み会で土御門に言われて思い出した。けどよ、言われて思い出せただけまだマシってもんだろ?」 美琴の夢、とは不治の病である筋ジストロフィーの治療法を発見する事だった。 美琴は自身が一六歳の時にぶっちぎりの主席で(上条の通う)高校を(上条と同時に)卒業して、冥途帰しの経営する病院でその研究を開始した。そして二○歳の時に、冥土帰しと滝壺理后の支援の元、美琴のDNAマップと自分だけの現実(パーソナルリアリティ)をデータ化したチップを内蔵した、他人に自らの体を動かせる程度の微弱な発電能力を植え付ける性能を持つ『チョーカー』型の電気信号発生誘導装置の開発に成功――――。長期間チョーカーの発する電磁波長に脳波を強制的にシンクロさせる事によって、本来徐々に失われていく肉体の発電能力を補足・強化していきやがてはチョーカー無しで生活できるようになる、というのが治療のプロセスだ。 チョーカーがどういう仕組みで働く物なのか上条の頭では遠く理解できないが、美琴と冥途帰しと滝なんたらの発明で今の世界では、筋ジストロフィーは『必ず治る病』として認識されている。『チョーカー』が出来るまでの行き卒を考えるとなんとも遠回り(ひにく)な道を歩んだのは否めないが、幼き日の美琴の願いが叶って本当に良かったと上条は思っている。「土御門さん? あの時の飲み会って会社のじゃなかったの?」 大丈夫、大丈夫だよーと上条はゆっくり美結の頭に右手を乗せ、なんとか受け入れられると、その後両手で少女の頭を優しくくしゃくしゃに撫でまくり、「ほら、仲直りだ。俺が悪かったって。指切りして仲直り」「……うん」 ゆびきりげんまんうそついたらはりせんぼんのーますゆびきった、と美結と約束した。 そして上条は美結の頭を撫でながら、「ったくなんで美結ちゃんはこんなに可愛いのかねー。会社にも連れて行きたいくらいだ。……て美琴、なんだっけ?」「だから、アンタが誕生日すっぽかして行った飲み会って会社のだったの? って聞いてんのよ。土御門さんはアンタと同じ会社じゃないでしょ、確か」「あーはいはい。あれね。……いや。会社のだったけどたまたま居酒屋で会ってさ。色々喋ったんだよ。んで、そん時にタイムカプセルの話をね。アイツ、タイムカプセルの事結構楽しみにしてるみたいだった」 美琴は美結の頭にピョコっと生えている髪の毛を親指と中指で軽く引っ張って、「ふーん。あの人がね。ちょっと意外かも」「クソ野郎だけど根は信念強い奴だからな。『大切な者のためならそれ以外は躊躇わずに捨てる』とか歯が浮くような臭い台詞が何故かしっくり来やがる」「美結はどうする? 連れて行くのは危ないんじゃない?」「危ない? 何に狙われてんだよ? そもそも、科学側最強の主婦が護衛についてんじゃねーか」「ほら、黒子がいるじゃない。『テイクアウトですの! お姉様のDNAが混ざったお子さんゲットですわーうげっはっはっはっはっは!』って」 なるほど、と納得する上条。「けどよ。白井の事を念頭に入れたとしても別に連れていったっていいんじゃねーか? というか上条さんは成長した我が子の自慢をしたいんですが」「まぁあの子はわきまえる所はわきまえてくれるしね。入学の準備でゴタゴタする時期だろうけど、連れてっても問題なさそうかしら。……そ、それに私も自慢したいし!」 美琴は美結のホッペに自分のそれを擦りつけて、「ホント生まれた時から天使みたいな肌質よねー。それにどんどん私に似てきて可愛くなってるわよ、アンタ。将来が楽しみ。というわけで美結、ママの自慢のために一緒に来てくれる? アンタも黒子の事は嫌いじゃないわよね?」 うん! と元気な美結の了承。 以前白井黒子にアダルトなブラジャーを装着されたトラウマは乗り越えたようだ。 意見が一致する一家。「んじゃ美結。もう一時間は経ったしそろそろフードパークに戻んねーか? 多分今なら並ばないですむと思うぞ」 うん! と少女は力強く頷いた。 美結は一ヶ所だけ飛び出ている髪の毛をピョコピョコと揺らしながら店員に、「さんだん! さんだん!」 アイスの『段』の事だ。一番下にミント、その上にチョコ、一番上にストロベリーを乗せて欲しいらしい。最後にミントとは五歳児にしてはなかなか渋いチョイスだ。 上条はレジの上にある値段表を眺めながら、「……なんでこういう女の子の食べ物って妙に高いのでせう? 俺の昼飯代と同じくらいあんじゃねーかよ」「昼ご飯は毎日お弁当作ってあげてるでしょ。レシピとか素材に結構こだわってんのよ、アレ。何か不満なのかしら? ……まぁ、」 と言いつつ、と美琴は一息置いて、「明日は入学式の正装を用意するのに早朝から実家まで出かけるから、美琴センセーのおいしいお弁当はないのよ。悪いけど明日は外食で我慢してちょうだい」 えーマジですか、と割りと本気でしょげる上条。 と、自分達のせいで客が止まっているの見て、「あ。え、ええと、コイツが言ってたのを下さーい……は、はは」 美結の要望通り、三段分の五四〇円(かみじょうのひるごはんだい)を払うと受け取ったアイスを美結にそっと手渡す。上条としてはそんなに食えるのか~? 的意見なのだが、残したら残したで上条か美琴が食べればいいだろう。『ボリュームはあればある程お得』。 子供によくある、単純な考えだ。 と。 ちらり、と上条は、『エルモ』と言うブランド物のワイシャツの局部を内側から極端に押し上げている美琴のバスト九二センチの胸を―――、「あ痛ててててて!? 今度は何だよ!? 今のは完全無欠に無実だと思いますぞわたくし上条当麻は!!」「……いや。何でだろう? 『ボリュームはあればある程お得、か。……ふっ。上条は思う、学生時代の美琴に今の美琴を見せる事ができれば、昔あれだけ胸の事で騒ぐ事もなかったろうに、と』とか思い始めそうだったから」 これもう一心二体以上だろ!? と上条は彼なりのデレ(?)を披露しつつ、「お、俺向こうでフライドチキン買ってくるわ。お前は何か食べたい物とかあるか?」「私はいいや。……幸せ太りしてるみたいだし。美結が残したのを食べる事にするわ」 うわぁ結構根に持っていらっしゃるーっ! だ、だけど、だけど美琴が怒ってるのもちょっと可愛いしここはどう動くべきか!? と、現状を打破すべきか享受すべきか、テーブルに向かいながら上条が悩んでいると、 ぺちょり、と。 美結の食べていたアイスのストロベリーの『段』が床に落っこちた。「あ、」 その声は美結のものだった。 幼心からか、美結は慌ててストロベリーの『段』を戻そうと屈むが、逆にそれが仇となってしまい連鎖的に二段目のチョコの『段』もぺちょりと零れてしまった。「ありゃー」 それから最初に動いたのは美琴だった。 美琴はまず、テーブルにあった客用ティッシュで落ちたアイスを包むとそれをゴミ箱に捨て、ついでにもう一枚ティッシュを取り出し美結の口の周りに付いているアイスを拭き取った。 一方その頃、その様子を見て呆然と立ち竦んでいただけの上条はこう叫んだ。「なんかカッコイイ所を持ってかれた! 側から見ると俺すげえダメな夫じゃんっ!?」 美琴は美結を抱き上げ椅子に座らせて、「元々そんなに出来る夫だったかしらね? 誕生日忘れさん」 ぐわぁーっ! と叫びがフードパーク内に響く。 やれやれと呆れ気味の美琴のため息まじりの反応に、上条は『く……っ!』と頭を抱えた。 そして。 上条は俯いた顔をグバァ!! と勢いよく上げて美琴の顔を正面から見据えると、腹の底に思い切り力を込めて一言、「よろしい!! ならばこの出来る夫上条当麻は可愛い娘のためにもう一つアイスを買ってきてしんぜよう!!」 今日び給料日前のサラリーマンの財布の中身なんぞ、高校生のそれと大して変わりない。 五五〇円。 それが上条の安っぽい財布に入っている総額だった。「………………………………………………………………………………………………………、二段かぁ」 それは、明日の昼ご飯代(一二六えん)を差し引いた場合の計算である(逆に言うと、全て注ぎ込めばギリギリ三段分の値段には届くのだが)。『出来る夫』と宣言した矢先、その舌の根も乾かないうちにこのざまではその逆『出来ない夫』だ。 しかし、と上条は思う。 元々この金(とさっきのアイス代)は遊園地で美結のオヤツにでも使ってあげるはずだったのだ。それで今日の夜に『お金なくなったからお小遣いちょうだいマーマ♪』と美琴にネダる予定だったのだが……こうなった以上今夜小遣いをネダるのは無しの方向だ。昼ご飯代を削って子供のオヤツを買ったと言えば聞こえはいいが、その反面、札もないくせに何頑張っちゃってんの? 的なイメージを与えてしまうのは避けられなそうだからだ。 何と言うか、タイミングが悪かった(ふこうだ)。(ま、まぁ一食くらい抜いた所で問題ねーし……) いっか、と先ほどと同じメニューを注文した、所持金一○円の上条。 注文した品を受け取り、美琴達の所へ戻る。「……ありがと」 まぁ気にすんなと懐の広さをアピールする上条。「あれ? アンタチキン食べたいとか言ってなかったっけ? ついでに買ってくればよかったのに」 ……まさかフライドチキン一二○円が買えないだなんて恥ずかしくて言えない。財布に入っているのが銅のコイン一枚だなんて情けなくて言えない。「い、いや。急にサラダが食べたくなったんだけどこういう所じゃ野菜系の食べもんってなかなかねーだろ? それに俺もそろそろカロリーとか気にしないとヤバい歳だからさ」「??? 別にアンタは太る体質じゃないでしょ。お義父(とうや)さんだって、どちらかと言うと少し痩けてる分類よ?」「いやいや。同世代の人達を見てるとね、油断したら俺もいつか破滅しちゃうなぁ、と思うわけですよ。つうかさ、隣にこんな美人がいたら引け目とか色々感じちゃうだろ普通。格好良くなりてえの、対等になりてえの、お似合いって言われてえの。ハードボイルドに三○代デビューを成し遂げたいんです、上条さんは」「び、美人……」美琴は唇を尖らせて、「ま、まぁ? ジムは行ってないけど寝る前にストレッチしたり乳液塗ったりしてるからね? それなりに美への追求はついえないわよ。……そ、それと。アンタはそのままでいいと思うわよ……? だって、あ、ああああ、ああああアンタは今のままでも十分……そ、その。か、かかかか、かか格好いいんだから……。無理に高い所に手を伸ばさないで現状を維持してほしいなぁ、と私は思うんだけど……」「……美琴さん。王道っつうのは、とも一転すればベタって事なんだぜ? それ以前にその歳になってツンデレとはこれ如何に」「うっ、うるさいわね。わ、私だって好き好んでこんなキャラやってる訳じゃないのよ! ……ただ、アンタの事を考えたり喋ったりするとどうしてもテンパっちゃって……」「……、お前」 やっぱ可愛いヤツだな、と上条は言った。「さ、流石にこの歳になると可愛いとか言われてもそんなに嬉しくないわね……。い、いやホント。マジで」「……、お前」 やっぱ可愛いヤツだな、と上条はもう一度そう言った。 しばらくの間美琴は平然を装った(つもりなのだろう)が、やがて薄ピンク色に染まった頬っぺを両手で押さえて、「………………………………………………………………………………………………………ぅゎ」 腕で顔を隠すようにテーブルに頭をくっつけ、それっきり動く気配がなくなった。 誰がどう見たって、これは照れている。 しかし美琴が昔のままと言うなら、それは上条にも言える事だったりするので。 上条は窓の外を見て、「おっ、雨やんできたな! 帰りは歩きで済みそうじゃん」「………………………………………………………………………………………………………、」「痛あっ!? 今日はいつになくヴァイオレンスだなオイ! 顔赤くして上目遣いなのが可愛いけれど!」「……。……はぁ」美琴はまだ顔を赤くしたまま、「つーか本当に雨やんでるじゃない。うわ、日まで出てきたし。樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)がどこかの誰かさんに破壊されたのは僥倖だったけど、天気の事に関して言うと、こうも外れまくるのはやっぱり不便よねー。……布団干したかったのに」「確かあれは複製不可能の物質で出来てたみてえだからな。まぁ今更復元されて、絶対能力者進化計画(レベル6シフトけいかく)もう一度やりまーす、って事になっても洒落になんねーし今のままでいいだろ」 完全なシュミレートマシンなんて壊されてよかったんだと、上条は心の中でもう一度囁いた。 そりゃこれから起こる出来事が分かるとしたら、不幸な出来事とは金輪際さようならできるだろう。 そして樹形図の設計者にはきっと、美琴と喧嘩をして食い違ったり、美結に拒絶される未来が記されているかもしれない。 それが事前に分かっていれば、回避できるかもしれないのは分かる。 けれど。 そうだと囁いてはみても、上条は『アレ』が現存していて欲しいとは思わなかった。 冷たい機械に弾き出される・決められたレールを走る未来なんて、多分なんの『希望』もないから。 上条当麻は、上条美琴にとっては一生を誓った夫で、上条美結にとっては血を分けた父親。 未来は見ずに今を見る。 過去を振り返ず今を噛み締める。 ……なんて綺麗事を言ったら美琴に『いつになったら給料上がんのかしらねー』と言われかねないが、 それでも、上条は今だけを見ていたい。 だって。 上条当麻の今は、こんなにも幸せ(しあわせ)なのだから。 未来にこうなるから今は耐える時期だとか、 過去が失敗だったからそれの埋め合わせをしなければならないとか。 そう。 そんな事一切考えずに、まるで子供のように今を謳歌していたい。 それが上条の願いだった。 ふ、と彼は笑う。 社会人、保護者にもなって、こんな幼稚な現実逃避に走るなんて。 それだけ今の光景が幸せなのだろう。 上条一家はヨーカドーを出る。 灰色に輝く雲を見て、所持金一○円の上条は『バス代浮いてよかった』と小さく呟いた。 fin
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暖かい春の日には。 4月8日 AM 6:00小鳥がチュン・・・と鳴き始めるこの時間帯に、寝室に置いてある目覚ましが朝を告げる。ピピピ、という機械音を眠そうな瞼で止めたのは美琴だった。彼女は時計に表示された曜日を見て日曜日だと気づくと、もう一度眠ろうとして布団にもぐりこんだ。しかし、目を閉じると不意に後頭部を撫でられた。「おはよ、美琴」そう言ったのは、隣で眠っていた上条だった。「ん・・・おはよ」小さな欠伸をしながら美琴は布団を肩まで掛けなおすと、再度目を閉じて夢の世界へ旅立とうとしたが、「おーい・・・せっかくの日曜日に寝るのかー」と、気になる一言を言われ、嫌そうに顔を上げた。「どういう意味よ・・・」「ほら、いつもは速攻で起きて急いで飯食って出てくけど、今日は何もないから時間があるだろ?だからその分ゆっくりできるなーなんて」「ふーん・・・・それじゃあおやすみ」なんだか嬉しそうな上条に対してぼんやりとした美琴は睡魔に負けて眠ろうとした。「えぇ・・・それはちょっと冷たいんじゃ・・・まぁいいか」ふぅ、と溜息をつくと上条は彼女のおくれ毛を耳にかけた。隠れていた小さな耳が出ると、ゆっくりと美琴に近づく。ここで美琴は、彼の不思議な行動から今からやろうとしてることにようやく気付いた。「(耳を噛もうとしてる・・・・!?)」人1倍耳が弱い美琴にとってこれは大ピンチである。眠気もふっとび、すぐに彼女はバタバタと暴れて抵抗した。「や、やめなさいっ!!変態!スケベ!!バカ当麻!」「わわっ!や、やめろって」よけようとした上条は頭を後ろの方に動かした。しかし、それが不幸を呼んだのだろう。美琴の指の先端―――つまり彼女の爪が上条の頬を思いっきり引っ掻いた。「ッ・・・!!」痛そうな声をあげ、顔をしかめて「っいてて・・・」と言いながらボフっと枕に倒れこんだ。「きゃッ・・・ご、ごめん!大丈夫!?」驚きながらも申し訳なさそうにした美琴が頬を撫でる。「本当にごめんね・・・引っ掻くつもりはなかったのに爪が当たっちゃって」少し赤く腫れた頬を謝りながら撫でる彼女を見て、上条はあることを思いついた。「気にすんなって。だけど美琴にはお仕置きしないとな・・・」台詞の前半は優しいのに後半でいきなり黒くなった上条はニヤリと笑うと、「?」の顔をする美琴の右手を掴むと、人差し指と中指を、パクリと口の中に入れた。「――――ッッッ!?」「引っ掻いた指はこの2本だったよな?」もはやパニック状態で声すら出せない美琴をからかうようにして甘噛みを始めた。噛むといっても先の方だけだが。一通り噛むと、今度は舐める。細い指の震えがだんだんと小さくなったころ、ようやく彼女の右手を解放する。顔を赤くした美琴はさっと手を戻すと、「やッ・・・い、いきなりなんてことすんのよこのド変態ッ!!人の指舐めて何が楽しいのよ!?」「まぁそうピリピリするなって。なんなら今度は全部やってみるか?」「~ッッ!!アンタの脳は一体何でできてるわけ!?っていうか手洗ってくる!!」ダッシュで洗面所に行こうとする彼女だが、後ろからくるりと回された上条の腕に拘束されてしまう。「それじゃあお仕置きにならないだろ?」「うっ・・・は、離してよ」むぎゅーっと抱きしめられ、ほとんど身動きがとれなくなっていた。まぁ、それが彼の狙いなのだが。 今離したら逃げるからダメー。それに・・・」上条はぐいっと頭を美琴の方に近づけると、「はむっ」「っな!?ひ、ひゃああッ!!」「ひゃっきはへきなかったひな(さっきはできなかったしな)」さっきやろうとしていたこと―――つまり耳噛みを実行した。弱点を甘噛みされてやぁーッ!!とわめく彼女の横で上条ははむはむと噛みながら耳は意外とやわらかいことに気がついた。「やッ・・・痛っ!強く噛むなっ離れろバカッ!」彼女の抵抗が激しくなったところでいったん引き上げた。離れた時に美琴の顔を見ると、顔を真っ赤にして少々泣き顔になっていた。ちょっとやりすぎたかな、と上条は思う。そっと腕を解くと、猛ダッシュで洗面所に駆け込んで行った。「やべ・・・怒らせちまったかな」 暖かい春の日には。 2 同日 AM 6:17しばらくすると寝室のドアをバン!と開けて前髪から弱めの電気をパチパチ出しながら美琴がやってきた。顔を洗ってきたのか、周りの髪が少し濡れていた。彼女は怒り気味でドカドカとベッドの上に乗ると、前髪以外は布団に潜り込んだ。・・・前髪からは、電気を出したままで。「痛ッ!!痛いです美琴さんッ!!ビリビリよりパチパチの方が静電気みたいでいだだだだッ!!」前髪から放たれるまさに静電気のようなものは上条の頭あたりを直撃している。「アンタには魔法の右手があるじゃない」布団から顔を出した美琴にそう言われて慌ててそれを打ち消す。一瞬にしてなくなった電気に安堵の息を漏らす。互いに何も話さぬまま数秒間、ゆっくりと時間が流れる。そして上条が口を開いた。「ごめん・・・やりすぎた。そんなに嫌だったと思わなくて」そっと手を伸ばし、彼女の髪を梳く。濡れていた部分が体温で温かくなっていた。美琴は黙ったままくるりと寝返りを打つと、上条と向き合う。「あんなに嫌だって叫んでたのに」「ごめん。我慢できなかった」「・・・我慢、してたの?」「答えないとだめでせうか?」「当り前でしょ!朝起きていきなり耳噛まれたこっちの身にもなってよねっ!」むー!っと威嚇しながら人差し指をぐいっと突き出す。可愛らしい威嚇をされた上条は梳いていた手を離すと、ぼそりと答えた。「・・・してました」「ということは前からやりたかった、と?」「ハイ・・・」今までスキンシップはキスが限度だったのだが、突然の行動に正直驚いていた。しかも彼は大胆な人というわけでもない。理由がある、と美琴は悟る。ふぅ、と溜息をついて怒りを落ち着かせた。「なーんでいきなりこんな行動に出たのか知りたいんだけど?」「うっ・・・それは」「なに戸惑ってんのよ。そんなに言いたくないような理由でもあるのかしらー?」「・・・・からっ」「む?」「み、美琴が!可愛くてしょうがなかったからだよッ!!そ、その・・・最近忙しくて家にも帰れねえ日が続くし・・・ 帰っても遅いからもう寝てるし・・・つ、つまり寂しかったんだよ俺はッ」時間がない。最近出張の多い上条は事実、家に帰れない日が続いていた。もちろんメールか電話で連絡は取っているがやはり寂しさがこみ上げてきたのだろう。家に帰るのは日付が変わる時間帯。部屋は真っ暗でおかえりの一言さえも聞けない。ラップに包まれたご飯をレンジで温めて1人で食事をする。それがすでに日常と化している時点で実は寂しいどころかそれ以上になっていた。理由を知った美琴は怒りが自然と消えていて、「か、かわッ!?」と小さな悲鳴を上げていた。そんな彼女が今日はとても愛しく思えて無意識に強く抱きしめてしまう。「やっ・・・なんか苦し・・・は、離して」「ずっと―――――――こうできるのを待ってた・・・」抱きしめたのも久々な気がした。温かい体温とふんわりと香るシャンプーの香り。全てが懐かしくて、今までの我慢が解放されたような感覚だった。しばらくその感覚に浸っていると、上条の気持ちをやっと理解した美琴が口を開いた。「寂しかった・・・のよね。ごめんね、気付かなかった」「いいよ。今――――幸せだから」「今日は日曜日で時間もあるからゆっくり休んでね」上条はあぁ、と頷くと彼女と唇を重ねた。離れる際にピクッと美琴が震えた。「どうかしたか?」「あ、いや・・・また噛まれるのかと思って」「ほほう」「何ニヤニヤしてんのよッ!ってちょっバカ―――」美琴の甘い声と共に、彼女の首元に上条が優しく噛みついた。先ほどよりは抵抗しなくなった彼女が茶色の瞳を潤ませる。今までの分を取り返すように、甘い時間を過ごした、暖かい春の日の朝。~Fin~
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小ネタ ゲーム化? 美琴「ね、ねえ…私たち今度はゲームになるんだって!」上条「マ、マジですか美琴センセー!?ジャンルは何でせうか!?」美琴「えーっと…対戦アクションらしいわよ」上条「なっ…ということは、わたくしめは皆さまにボコボコにされるんですな…」美琴「そ、そんなことないわよ!アンタ強いし、ホラ!私の髪飾りも花の方になってるのよ!」上条「いいって…わかってるんだよ…俺が神裂や土御門にボコボコにされるのは…」美琴「そ、そうだったとしても!一緒に戦えるのかはわかんないけど!」上条「?」美琴「ひ、膝枕してあげるから!」上条「……御坂」美琴「な、何よ?」上条「ハグとキスはok?」美琴「えっ…うっ…そ、それは…」上条「……ダメ?」美琴「……ダメじゃない」
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前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある未来の・・・ 2.初めて 「……朝?」 突如閉じた瞼から光が入ってきた事を感じて目を覚ます。 視界は数秒ぼやけていたが、自分のいる場所が常盤台の寮であると分かる。 「黒子……?」 ルームメイトの名前を呼んでみるが返事はない。 どうやら出かけてしまったようで、ハンガーにも制服がかけられていない。 美琴は風紀委員(ジャッジメント)の仕事でもあるのだろうと判断してベッドから体を起こす。 「……昨日……は?」 ふと、自分が昨日の自分を振り返る。 だが、それと同時に頬が一気に熱くなり、またベッドに倒れこんでしまった。 (アイツに……だ、抱きしめられた!!?) 昨日の夜、美琴は未来からやってきたと言う三人の子供たち出会った。 そして、その帰り道、美琴が常盤台の辺りまで来たときに上条に抱きしめられたのだ。 もっとも、美琴は告白まがいの言葉まで言っているがそれを凌ぐ(正確には忘れさせる)破壊力があった。 「うぁ、ああああああああああああああああああ!!」 ルームメイトがいないのをいい事に叫んでしまい ベッドの端から端までを落ちない程度に寝返りを打つ。 (ど、どうしよう、抱きしめらた……!きょ、今日はどんな顔で会えばいいのよ!!) いままで鈍感で好意を持っていたのに気づかないような男性にいきなり抱きしめられた。 初恋の相手であって、しかもその男性が自分の理性を壊すほどの人ならば レベル5と言っても純情な乙女である美琴には今日顔を合わせるのすら超えられないくらいの壁だった。 と、悶々しているところで突然「ゲコゲコゲコ」とカエルの鳴き声が耳に響いた。 「ひゃっ!」 いつも聞いているはずの音なのに普段出ないような声が出てしまう。 恐る恐るカエルの鳴き声の着信音がするゲコ太の携帯を手に取り誰からの連絡か確認する。 「ア、ア、ア、アイツからメール……?」 それは彼女が悶々としている原因の少年、上条当麻からだった。 のろのろとメールの受信画面から振り分けボックスの『馬鹿』の項目を選んで新着のメールを開いた。 「さて、とただいまからお食事を作ろうと思うのですがいかがいたしましょう、姫?」 上条当麻はメールを送り終えると、真っ白な修道服に身を包んだ少女に問いかけた。 時刻は十一時をさしていて、昼食にはまだ少しはやい位なのだが、今日は昼から予定があるので早めに作ったのだ。 だが、肝心の修道服の少女は、部屋の中央で荷造りを始めていた。 「あの~インデックスさん?何故荷造りを始めてるんでせう?」 その様子が非常に恐ろしくて、声をかけてみる。 インデックスと呼ばれた少女はゆっくりと振り返ると 「とーま、昨日言ったよね?」 なんだか、異常に目が輝いていた。 「昨日?なんか言ってたっけ?」 上条には覚えがなかった、そもそも人生でベスト10に入るくらいの大事件が起きた次の日なので 少女が荷造りを始める理由は上書き保存されてしまっている。 「今日からこもえとあいさの三人で食べ放題!飲み放題!一週間春の幸祭りにいくんだよ!」 今にも飛んでいきそうな勢いの元気なのは食い放題が理由だったようだ。 「あ……そー、いえばー」 そういえば、一週間くらい前から毎日その事を言われていた気がした。 上条の担任である月詠小萌が彼女の専攻である発火能力(パイロキネシス)の研究が最近評価され 証をとったらしく、その副賞に一週間『外』への旅行券をもらったと言う話だったはずだ。 「まー、警備員(アンチスキル)とかに捕まらないようにな」 「とーま!私のどこが怪しいって言うの!?」 「だああああああああ!わかった、わかった!早く行かないと置いてかれるぞ!?」 服装からですが!?とツッコミを入れてしまいそうだったが なんとか我慢して、荷造りを終えたインデックスを送り出す。 インデックスは最後まで怒っていた様子で上条を睨んでいたが 寮から出て小萌先生の住むアパートへ向かう頃には上条のほうを向いて笑顔で手まで振っていた。 (……タイミングいいっつーか、問題はこれで消えたな) ふぅ、と息を吐き、閉めた玄関のドアにもたれる。 問題、と言うのはあの三人とメールを送った人物の美琴の事だった。 (インデックスには悪いけど、仕方ないよなぁ) 正直、インデックスにはかなり不快な思いをさせるかもしれないし 少しの間だけでも離れさせる方法は一夜では思いつかなかったので上条はかなり安心していた。 メールの内容は必ずインデックスが怒るものだったからだ。 (御坂を家に入れるなんていったら多分頭を噛み砕かれるだろうからなぁ) あの三人も来る予定なので、いつもの三倍噛まれるのは必至だ。 もう一度、ふぅ、と息を吐くとこれから家に招く四人を思い 同時にインデックスに心の中で謝りながら昼食も作らず 四人を迎えにいく準備を始めた。 時刻は昼の一時をさす頃、上条は待ち合わせの場所、昨日美琴が能力を暴走させた公園まで来ていた。 ただ、彼の足取りは重い、待ち合わせに自販機の前を指定したのはいいが 公園に向かう途中に昨日自分が何をしたかを思い出してしまったのだ。 (会うのはいいけど会って何話せばいいんだ!?御坂だけが来てたらかなり気まずいぞ!?) 会う約束をしてしまったのはもう仕方ない事だが、 上条は先にあの三人組がいることを祈りつつ公園内に入った。 「げっ!?」 嫌な予感は的中した。 御坂美琴が自販機の前でキョロキョロと忙しなく辺りを見回していた。 待ち合わせの時間まで後三十分近く時間があるにもかかわらず、だ。 (上条も気持ちが逸ってしまい、かなり早く来てしまったのだが) (まだ、気づいてないよな?) 美琴の視界に入らないように後ずさりをして公園の出口へ向かう。 やっぱり三十分後にしよう、そうしようと自分を言い聞かせながら 公園出口直前まで来たところで (……猫?) 公園に入った直後には気づかなかったのだが 美琴が辺りを見回しているのは待ち人を探しているのではなく 人が近くにいないかを確認していたようだ。 上条は悲しい気持ちがしないでもないが、美琴に見つからないように木の陰に隠れた。 (なんか変態さんみたいだな……) 周りに人がいたら上条は確実に風紀委員か警備員を呼ばれお縄についていただろうが 幸い人のくる様子はなかった。 美琴は猫に手を伸ばすが、猫のほうが怯えてしまっていて美琴と距離をとる その開いた距離を美琴が詰めるが猫はやはりその分だけ距離をとってしまう。 (な、なんなんだ、あの可愛い生物は!?ほ、ホントに御坂か!?) 必死に猫を手で招いているが、猫は逡巡しながらも近寄ろうとはしない。 その構図がなんともいえないもどかしさと可愛らしさを演出していて 上条の本能を刺激していた。 (ち、近寄りたいが、近寄れな……って、あれ?) さっきまで寄りかかっていた木がなくなっていた。 上条の寄りかかっていた木は細い木だったのだが、かなり老木だったのか 見るも無残な形で見事に近くにあった気にもたれて折れていた。 「うっそ、だろ?ぎゃあああああああああああああ!」 バランスを保とうとしたところで、柵に足を引っ掛け 盛大に上条はこけてしまった。 「何してんのよ……アンタは!」 どうやら、お嬢様に見つかってしまったようだ。 目の前には、ツンツン頭の少年、上条当麻が地面に倒れている。 待ち合わせには後10分くらい余裕があるだろうか、美琴は上条が時間より早く来ていたことに驚いていた。 「ちょっと、へ、返事しなさいよ!」 上条は数秒何かに悩んでいたのか倒れこんだままだったが やれやれ、と呟きながらゆっくりと立ち上がった。 「えーっと、猫とコミュニケーションをとろうとして逃げられる健気な美琴タンを観察していました」 「――――な!?あ、あんた!始めっから!?」 人が近づいて来たら、彼女の電磁センサーが知らせるはずだが 猫に集中しすぎてしまったようだ。 (しかも、コイツいま私のこと名前で――――!?) 上条がいつからいたのか、名前で呼ばれたこと、恥ずかしい姿を見られたこと、と 様々な事柄が美琴の頭をぐるぐると回っていて、考えがまとまらない。 「おーい、御坂……?」 「ひゃっ!ひゃい!?」 ビクッ!と体を硬直させて返事をしてしまった。 上条は先ほどから様子のおかしい美琴を心配してか彼女に近づいていく。 「ん……!?」 「顔赤いけど、熱はないみたいだな」 額に手を当てられた。 右手で美琴の額を押さえて、あいた左手で自分の額も押さえて熱を測っている。 それだけならよかったのだが。 (ち、近い!?何でそんな近くでやんのよ!?) 少し体を伸ばせば、キスが出来てしまうくらい近い距離だった。 ただ、上条はそんなことには全く気づかない。 「大丈夫か?」 呑気に聞いてくる。 「ぅ……うん、だい、じょうぶ」 内心全く持って大丈夫ではなかったが、何とか理性を保って答える。 「あ……」 答えると同時に額から手が離れた。 上条の手の体温も離れていってしまい、妙に切なさが残った。 「……もう少しであいつらも来るかな?」 上条が公園にある時計を一瞥してそんなことを言った。 美琴も時計を見る。時刻は1時半を指していた。 「そういえば、今日は何処に行くの?」 待ち合わせの時間になったはいいが、美琴は肝心なことを聞いていなかった。 メールにも『一時半に公園に来てくれ』としか書かれておらず 美琴も期待や想像(妄想?)をするだけで聞こうとはしなかったのだ。 「ん?言ってなかったっけ」 「言ってないわよ」 上条は何故か照れたようにポリポリと頬を掻く。 顔も少しだけ赤かったが、美琴は気づかなかった。 「……俺んち」 ……その時、美琴の中で時間が止まった。 彼女の後ろから「あー、いたいた」とか「遅れてわりぃ」とか「パパーママー」と言う 声が聞こえた気がしたが、耳に全く入って来なかった。 「おぉ!ここが親父の住んでいた学生寮か!」 一人はしゃいだ声を出しているのは上条当麻の一人息子(の予定)の当瑠だ。 その声があまりにも大きかったので、部屋から住人が顔を出すのではないかと 上条は内心ひやひやしたが、どうやら寮内には隣人の土御門を含め留守にしているようだ。 こんな偶然があるのだろうか?と疑問に思ってしまったが考えていても仕方ない、と判断し いつ大きな声を出すか分からない少年を押しながら自分の部屋に入った。 「お邪魔しまーす」 鍵を開けて一番初めに入ってきたのは美詠だ。 その次に当瑠がはいったのだが、美琴と美春が中々入ってこなかった。 「どうした?」 美琴は美春と手を繋いだまま俯いていた。 美春は美琴と上条を何度も見ながら「はやくはいろー」と言っているが 美琴が入ってくる気配はない。 「……ほら、入れよ」 美琴の腕を持って引っ張る。 「あ、ちょっと!!?」 彼女は驚いた様子だが、気にせずに玄関を上がらせて 五人では少々狭い居間に押し込む。 「一応、鍵は閉めて、と」 隣人の土御門はまるで自分の部屋かのようにドアを開けてくるので 用心してドアの鍵を閉める。 そして、居間に行き、美春を抱いて座っている美琴の隣に腰を下ろした。 「で?お前ら聞かせたいことがあるっていってたよな?」 「あぁ、やっぱそのことか」 当瑠は予想していたのか、別段表情を変えなかった。 上条は昨日の夜大まかに説明を受けたのは美春の能力くらいだったので 当瑠や美詠の未来の話には興味があった。 「聞きたい?」 「……聞きたい」 答えたのは上条ではなく美琴だった。 今まで黙っていたので上条は少し驚いた。 「じゃぁさ、まずこの写真見てよ」 写真を取り出したのは美詠だ。 上条と美琴は机の上に出されたそれを食い入るように見た。 写っているのは、髪の毛をツンツンさせた三十代くらいの男性と 茶色の髪で男性と同じくらいの年の女性が、笑っている写真だ。 ……どこをどうみても上条と美琴だが、今のような幼さはなく 成熟した大人の印象はしっかりとあった。 上条は写真を見ている時、隣にいる美琴をチラリと見て 写真の女性の顔を確認したり、美琴の体のほうに目線がいってしまい ドキリ、としてしまったが、美琴の方はいつになく真剣な目で写真を見ていた。 「まずは、これで二人が結ばれるって事は信じてくれたかな?」 美詠がそんなことを言ってきた。 上条と美琴は目が合ってしまい顔を赤くしてそらし、頷いた。 「ま、そのことを踏まえたうえで、これから話すことを聞いてくれよ」 当瑠がニヤニヤしながら言ってきた。 上条はその表情に得体の知れない不安を感じた。 「お、おい……なんか嫌な予感がするんだが!」 「じゃっ、二人がどれだけいちゃいちゃしてるか言っちゃいますかねー」 「いぇーい!美春もききたーい!」 やけにテンションをあげてる息子と娘。 上条の不安はどうやらまた的中してしまったようだ。 美琴のほうを見ると彼女もまた上条と同じ気持ちで不安そうな表情をしていた。 「じゃー、まず朝起きた時に……」 「「や、やめろおおおおおおおおおおおおおお!!」」 その後、たっぷり三~四時間くらいかけて拷問のような地獄が続いたのは言うまでもないだろう。 戦いは終ったと御坂美琴は確信した。 悪魔の口から悪夢のような言葉の数々が途絶えたからだ。 (私は、長く苦しい戦いに勝った!) 悪魔は今までにないほどに強大で凶悪だった。 しかし、美琴は負けるわけにはいかなかった、負ければ自分が自分でいられなくなるのだ。 そして彼女は勝利した、勝利をかみ締めると共に隣で同じように戦った戦友を見た。 「う、うだー」 戦友は机に突っ伏した状態でうな垂れていた。 疲労は彼女以上にあるのかもしれない。 思えば美琴自身よりも隣の戦友、上条当麻のほうが悪魔からの攻撃を多く受けていたような気がする。 「ちょっと・・・・・・アンタ大丈夫?」 突っ伏したままぶつぶつと色々呟いているので流石に心配になったが 彼の体を触るのにはためらいを感じた。 悪魔の攻撃は予想以上に自分を奥手にさせてしまったらしい。 「御坂さん、上条さんはもうダメかもわからんです」 今ならアニメやマンガで使われる『チーン』と言う擬音も当てはまるのではないかと美琴は思った。 「いやー、予想以上のダメージですなー」 悪魔の一人目、当瑠は達成感に満ちた顔だ。 戦友の上条に似ているせいなのかイラッときたが笑っている顔も似ているので直視は出来ない。 「お母さんも顔真っ赤にしちゃって、可愛いな~」 悪魔二人目、美詠も当瑠ぐらいに笑顔になっている 上条と美琴の反応に満足した様子だ。 「ママ、かわいいー」 ……小悪魔も混じっているようだ。 「あ、あんた達覚えてなさいよ」 馬鹿にされたのが悔しくて、負け犬かそこらのかませ的台詞を吐いて もう、今ここで焼っちまうか、と思い直すが。 ぐぅ~。 腹減りアピールをしてきた人物がいた。 「・・・・・・アンタ、お腹空いたの?」 その人物は上条だった。 「か、上条さんは昼食をとっていないのですよ」 攻撃されていた時とは別の疲れを見せる上条。 「どうして、食べなかったのよ?時間ならあったでしょ?」 「うぅ、そ、それはですね・・・・・・」 食べなかった原因は美琴自身にもあるのだが 美琴はそれには気づかないし、彼女は何も悪くないが。 「・・・・・・じゃぁ、ご飯にする?」 ぱぁっと上条の表情が明るくなっていき、突然立ち上がった。 「おぉ!おい、お前ら準備しろ!飯食いに行くぞ!」 上条は外食に行く気満々らしい。大笑いしている三人組に声をかけ 意気揚々と言う言葉がぴったりの調子でサイフを手に取ると玄関へ一目散へ駆け出した。 「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」 上条に続いていく当瑠と美春を引き止め、玄関で靴を履こうとしている上条を 掴んで元いた居間に引き摺り戻す。 「な、なんでせうか?早く行きたいのですが」 「誰が外食って言ったのよ!!馬鹿!」 美琴は自分の体温が上がっていくのを感じた。 きっと頬は真っ赤になっていて、目も泳いでいるのだろうと考える。 「他に何があるんだよ?」 「このクソ鈍感野郎が気づけよ馬鹿が」 罵ったのは美琴ではない、美詠だった。 美琴は驚いて美詠をみる。 美詠に罵られた上条は更にわからない、と言う顔をした。 「ほら、お母さん!言ってやって下さい!」 「え?あ・・・・・・う、ん」 逆に話を振られて美琴はどもってしまった。 正直思い返してみると外食のほうがいいのではないかと思ってしまった。 美琴が思い描いた光景はまさしく家族や夫婦のそれだからだ。 「わ、私が作るわよ、夕飯!」 対する上条の返事は 「へ?」 間抜けなものだった。 「はー、腹減った・・・・・・」 上条当麻はスーパーの袋を片手にもう何度目になるか分からない呟きを洩らした。 夕食を作ると言った美琴だが、上条の家の冷蔵庫に何もないのを確認して買い物を頼んだ。 お腹空いてるんでむりですといったら問答無用で電撃が飛んできたので音速にも勝るような速度で土下座をして家を転がり出たのだ。 「・・・・・・あと少しなんだから我慢したら?」 家を出てきたときについてきて隣を歩いているのは美詠だ。 先ほどから同じ事ばかりつぶやいている上条にそろそろ呆れている表情で ダラダラと歩く上条と歩調を合わせている。 「そんなことを言われましても家についても一時間ぐらいかかるだろ? 上条さんはもう限界が近いのでそんなに待てないのですよ」 育ち盛りの男子高校生なめんな!と胸を張る上条。 「・・・・・・はぁ、ホンッとにアイツそっくりね」 上条の態度に溜息をつく美詠。 だが、上条は気になる事があったのかキョトンとした顔になると 「ん?アイツって、誰だ?」 自分と似ている人物となると当瑠ぐらいしかいなのだが 上条にはそっくりの人物像がうまく浮かんでこなかった。 「な、なんでもない!さ、早く行きましょ」 美詠は何故か顔を真っ赤にして腕を振り回し始める その行動に「?」となる上条だったが 「まぁいいや・・・・・・」 そう言ってそれ以上追求をしようとはしなかった。 少しだけ沈黙する二人。 先ほどよりも少し速くなった歩調だがまた上条が口を開いた。 「・・・・・・そういやさ、疑問に思ってんだけど」 「・・・・・・何?」 「いや、美春の能力は説明されたけど、当瑠や美詠の能力は聞いてなかったなって思って」 出会ったときから聞きたかった事を聞く上条。 「・・・・・・知りたいの?」 「一応は」 ふぅん、と美詠は呟いたが、その後何もしゃべらずに周りを見回すだけで 話の続きをしようとしない。 「話してくんないの?」 「まぁ、いいんだけどね・・・・・・とと、信号赤か」 二人が通る目の前で信号が切り替わり、横断歩道前でピタリと止まる二人。 美詠の素振りは説明をしたくないと言うより、獲物を探すような顔つきだった。 「実際に見せたほうが分かりやすい能力なのか?」 「まぁね、演算の説明とかしても分かんないでしょ?」 「うっ――――!」 痛いところ突かれる上条。 常盤台と言っても年下の女の子に説明されるのは物凄く恥ずかしい上に 美詠の言うとおり物理演算とかベクトルの理論とかを大まかにで説明されても 理解できる気がしなかった。 「はぁ、じゃぁ、見せてくれよ」 「んー、でもなぁ・・・・・・」 「待ちなさい!!」 誰かの慌てたような声が迷っている美詠と上条の後ろでする。 何だと思って振り返ると美春と同じくらいの年の男の子が上条の隣を走りぬける瞬間だった。 「な!?」 信号は赤のままだ、そして一台の大型のトラックが少年に向かって走ってきている。 トラックは無人のAI操作のトラックなのか止まる気配はない。 距離がどの程度かは分からないがトラックはかなりの速度で少年との距離は詰めている。 「くそ!」 駆け出したのは上条だ。 走ってきた勢いのまま少年を突き飛ばす。 飛んだ距離は大した事ないがトラックの幅を考えれば十分に少年は無事になる。 あくまで少年だけだが。 トラックとの距離は人間の反応速度ではとても避けれないものとなっている。 (・・・・・・俺が死んだら当瑠たちはどうなるんだろうな) ふと、そんな事を思ったがトラックは上条を轢かず 突然不自然に傾き吹き飛んだ。 「・・・・・・!!」 何トンあるか分からないトラックは誰もいない歩道に吹き飛び ひしゃげた形でそこに鎮座した。 「私の能力ってさ、ちょろっと特殊なのよね」 息を呑み、トラックが吹き飛んだ方向とは逆のほうに顔を向ける。 「空力使い≪エアロハンド≫じゃないわよ」 上条の近くまで来て手を握り、立ちあがらす。 「能力名は『吸収構築』≪ドレイン≫、吸収したものを私のイメージした物質として作り直す能力 今のは空気中の風を吸収して固形の『砲弾』に再構築してぶっ放したのよ」 騒ぎを聞きつけて人が集まり始める。 警備員を呼ぶためか、吹っ飛んだトラックの状態を撮影するためか携帯を取り出している人もいるが それを気にすることなく美詠は話を続ける。 「私は未来の学園都市に四人しかいないレベル5≪超能力者≫その第三位」 そこで一度息を吸う。 「創造者≪クリエイター≫、そう呼ぶ人もいるわね」 どこかの誰かと同じ場所に君臨するその少女はニヤリと笑った。 「それで?警備員にアンタは捕まって、こんなに遅くなったと・・・・・・」 空はすっかり黒く染まった午後八時。 上条当麻は玄関口で仁王立ちしている御坂美琴にお説教を受けていた。 お説教とは言っても上条自身は何も悪くないし、むしろ人助けをして感謝される立場だ。 だが、現実は厳しい。 上条は警備員に犯罪者扱いされ、美詠にはいつの間にか逃げられていた。 そのせいで、説明をされ、一時間たってやっと解放されたのだった。 「外の警備員、内のビリビリ、不幸だ・・・・・・」 「ちょっと!何、溜息ついてんのよ!」 美琴の頭から青白い光が発生する。 上条はいつも通りの美琴の反応に本日二度目の音速土下座を発動させた。 「ちょ、ちょっと待て!電撃は勘弁してくれ!多分今の上条さんには貴方様の電撃に反応できません!」 「・・・・・・じゃぁ、今日は私がアンタに初めて勝つ記念日になるわね」 青白い光が更に強くなり、美琴の髪の毛が逆立ち上条の視界を照らす。 「あー!上条さんは早く御坂さんのご飯が食べたいです!」 空腹状態であることと、美琴が食事を作ってくれると言う話を思い出して 咄嗟に話題を変えようとわざと大声で言う。 「・・・・・・え?」 今にも爆発しそうだった美琴の青白い光が休息に止まっていき 逆立った髪の毛はパタリと倒れた。 「・・・・・・あ、アンタ、そんなに楽しみだったの?」 なんだか急に大人しくなってもじもじと指をからませる美琴。 端から見れば可愛らしい動きだ、しかし上条には命がかかっている これはチャンスだと思って一気に畳み掛けた。 「あ、あぁ!上条さんは御坂さんの作ってくれる食事が楽しみで楽しみで仕方ないんですよ いやー、一体どんな料理を作るのかな~、早く食べたいなぁ~」 「そ、そう・・・・・・そっか・・・・・・じゃ、じゃぁ作るから、あの子達と待ってて」 フラフラとしながら狭い学生寮のキッチンに美琴は入っていった。 (た、助かった・・・・・・?) 安心と疲れでしばらくはそこから動けなかった。 「~~~♪」 キッチンから美琴の鼻歌が聞こえてくる。 常盤台は中学卒業後には社会に適応できる人材を作るのを目標としている その為、能力開発だけでなく学習のレベルも大学生クラスの内容となっているので 社会人になって一人暮らしをする生徒たちは料理を学ぶ調理実習をするだろう。 (その実習内容が庶民的な料理であるかは謎だが) 食事が寮の食堂で取れるお嬢様学校とはいっても、それ以前に女子校である常盤台で料理が出来そうないのは 天然の箱入り娘くらいではないか?そう考えた上条だが。 (・・・・・・普段から作らないから怖いんだよなぁ) 要は経験値が貯まっているかどうかだった。 授業で習ったことを一人で実践に移すにはそれなりの積み重ねが必要だし 今はそれなりに料理が出来る上条自身も料理を作り始めたときは失敗の連続で 食材を無駄にしてゲテモノを作ってしまったこともあった。 つまり上条が言いたいのは。 (レベル一のまま装備も整えずダンジョンに入るのと同じなんだよな) ゲームに置き換えればそういうことである。 ちょっぴり自分が無事に生き残れるか心配になった上条だった。 「パパーどうしたの?げんきがないよ?」 「ん?」 考え事をしているといつの間に上条の懐に入り込んだのか美春が顔色を伺っていた。 「ちょっと考え事してただけだ」 そう言って、頭を撫でてやると美春は嬉しそうに笑って満足げにしている。 「美春は機嫌がいいな、いい事でもあったのか?」 「ママのつくったごはんたべるのひさしぶりだもん!」 わーい、と美春が両手を挙げて喜びを表現する しかし、そこでふと疑問が浮かんだ。 「久しぶりって・・・・・・御坂の奴何してんだ?育児放棄かよ」 多少不穏な未来を浮かべてしまう上条。 「違う違う、親父の仕事手伝ってんだよ」 美詠とテレビを見ていた当瑠が振り返って言う。 「手伝いって・・・・・・未来の俺一体どんな仕事してんだ? つか御坂と同じ仕事してんのかよ?」 卒業してエリート街道を突っ走る常盤台のお嬢様と 赤点量産で落ちこぼれの不良学生が同じ職場とはどういう事だ思うが そういうこともあるだろうとあまり深く考えない事にした。 「・・・・・・まぁね、職場の話はしないけど、飯のほうは美詠が時々つくってくれるし」 何の気なしに当瑠が言うが、隣でお茶を飲んでいた美詠がブーッ!とお茶を噴出した。 もちろん、当瑠に向かってだが。 「なにすんだテメェ!」 顔がびちゃびちゃになり怒りを露にする当瑠。 「ア、アンタが変な事言うからでしょうが!」 「何が変なんだよ!アホかお前は!」 ぎゃぁぎゃぁと叫びあいながら喧嘩をする二人。 「美詠は常盤台の学生なんだろ?寮生なのに大変じゃないのか?」 上条に疑問をぶつけられて、取っ組み合いになりかけた二人の手が止まる。 「・・・・・・ま、まぁ、毎日って訳じゃないし、その・・・・・・将来の勉強にもなるかなって」 美詠は顔を赤くしながらもじもじとし始める。 視線は泳いでいて、時々チラチラと当瑠の方を見ているのだが 上条と当瑠はそれに気づかない。 「将来って、お前もう結婚する相手でも決まってんのかよ」 上条は多少呆れた表情で美詠に問いかける。 「け、結婚!!?そんな事あるわけないじゃない!!」 「い、いやそんなに必死に言われましても困ってしまうのでせうが それに、お前ら兄妹なんだから別に寮生のお前が当瑠と美春に飯作るのなんて不自然じゃないだろ」 美詠がそこで、うぅと呻いて下を向いてしまった。 そしてそのまま何もしゃべらなくなったのだが、その沈黙を 「おーい、あんた等、ご飯できたわよ~」 実際に夕食を作っていた美琴によって破られた。 「どうよ!これが私の実力よ!」 ふふん、と自信満々にどうだ!と言う顔をする美琴。 上条はそれを見て苦笑していたが、盛り付けられた料理を見て驚愕した。 別に料理が特殊と言うわけではない、作られた料理は一般的な家庭でも見られる 大根おろしと和風ベースのソース仕立ての和風ハンバーグなのだが 出来立て感があるジュージューと言う音を立てているし、サイドに盛り付けられている ポテトサラダやそのほかの野菜、そしてついでに作られているコーンスープが 上条の空腹を更に刺激しているようで美琴の言葉も無視して料理を食べ始めた。 「・・・・・・ちょっと、聞いてるの?」 いただきますも言わずに食べ始めた上条に怒るが 「・・・・・・うまい」 「へ・・・・・・?」 「御坂・・・・・・これすげぇうまいぞ!! 上条さんは少しは料理が出来るつもりだったけど なんか自分の自信を壊されるくらい感動した・・・・・・!」 いつの間に食いしん坊キャラになったのか上条の皿にはもう夕食はなくなっていた。 「え?そんなに?うそ?」 疑問符しか出てこないが、美琴は素直に喜ぶ上条の姿が嬉しかった。 「あぁ、本当だ!」 「そ、そう・・・・・・ありがと・・・・・・」 美琴は上条が本心で言ってくれて作った甲斐があったと思う一方で 段々と気恥ずかしさがこみ上げてきた。 「その、子供たちも見てるから・・・・・・恥ずかしいんだけど」 「あ、わ、わりい」 上条もそう言われて冷静になり、美琴の方から視線を逸らす。 美琴もその視線を追ってみると、ニヤニヤ笑う三人組がいた。 「いやー、お暑いですなー、手料理一つでここまで褒めちぎるとは」 「い、いや、それは、その・・・・・・あまりの驚きで我を失っていたと言うか」 「でも、美味しかったんでしょ?」 「ま、まぁ・・・・・・」 「もっとたべたいよね、パパ」 「食べたいです!食べたいですから!もう私めをいじめないでー」 上条だけを苛め抜く三人組。 (未来の私たちも、こんな感じなのかなぁ) クスクスと若干苦笑い気味に笑う美琴、ただ未来の自分と上条を想像して 頭を何度も振って冷静さを取り戻そうとしたが、なかなか想像は頭から離れてくれなかった。 そして、上条がこの口撃の最中、一つの決心をしたことにも気づかなかった。 御坂美琴と上条当麻は常盤台の寮へ続く道を肩を並べて歩いていた。 食事を終えた後、時刻は夜の十時を回っていたが、泊まるわけにもいかず (上条の部屋にはあの三人組が泊まることになったので狭くなりすぎた) 一人で帰るといったら上条が送っていくと断っても譲らなかったので 好意に甘えさせてもらったのだ。 「な、なぁ、御坂」 「何?」 上条が美琴の方を見ずに話しかけてくる、声から少し緊張しているのは分かった。 「その、明日さ・・・・・・お前暇か?」 顔の方はあさっての方向を向いたままだ。 「え?・・・・・・ま、まぁ特に何も用事はないけど?」 答えている美琴の方も緊張が伝わってきてしまい なんとも言えない微妙な空気が二人を包んでいる。 「そっか・・・・・・じゃぁ、あのさ・・・」 まだ言うか言わないか迷っているのか上条の途切れ途切れとなっている。 「明日俺と、どっか、い、いかないか?」 「はぃ・・・・・・!?」 落ち着けと美琴は一度深呼吸する。 「そ、そうね!あの子達も過去の学園都市で遊んでみたいだろうし! 五人でどこか出かけるってのもいいわね」 「あ、あいつらは関係ねぇよ!」 「う、うぇ・・・・・・?」 上条が怒ったような声を上げる。 美琴は何故上条がそんな声を出したのか分からずに訳が分からないと表情でだしてしまった。 「あぁ、でかい声だして悪い、つまりだな、俺が言いたいのは・・・・・・その、あいつらと一緒じゃなくてだな」 「??」 ・・・・・・二人きりでどこか行こうと上条は誘ってきている。 そこまで考えがまとまったところで上条がえぇい!と意を決した声を上げた。 「御坂!!」 あさっての方向を向いていた上条の顔が急に美琴のほうを向き 美琴の両肩に手を置いて体ごと上条の方に向けさせられた。 「ふぁ!ふぁい!!?」 突然の行動に変な変な返事をしたが上条は気にせずに力強い目で言葉を繋げた。 「俺と二人っきりで明日、デートしてくれ!!」 普段の上条の口から出ないようなとんでもない言葉が出てきた。 (え?デートって言った?この鈍感男が?あっはっはー、ないない聞き間違いよね) いつもの上条なら美琴と一緒に外に出かけていても デートとは言わず、引っ張られて色んな場所を回らされている、位にしか思わないはずだ。 しかし、確かに上条はデートと言った、美琴を当然のようにスルーしてきた男がいきなり積極的になった事に 美琴の思考はどんどん冷静さを失っていく。 「ア、アア、アアア、アアアア、アンタががが、わた、わたしと、デデ、デートしたいって?」 噛み噛みで言葉を何とか搾り出す。 「あ、あぁ、お前と二人だけで、えぇっと、遊びに行きたいなぁ、なんて・・・・・・」 上条は妙なダンスでも踊るように体全体を動かして 言葉だけで伝わることをかなり手間をとって説明する。 「・・・・・・い、嫌か?」 上条が心配そうな顔をして美琴の表情を覗き込んでくる。 「・・・・・・嫌じゃない」 その言葉を聞くと心配そうだった表情が明るくなる。 「ほ、ホントか?よ、良かった、断られるんじゃないかと思った」 「こ、断るわけないじゃない!」 好きな人から誘われて、とは流石に繋げられなかったが 美琴は少しだけ素直に返事をすることが出来た自分にも喜ぶ。 そうこうしているうちに常盤台の寮が目前となってきていた。 寮の部屋に戻るのは安心できるが、美琴は寂しさも同時に感じていた。 「も、もう、大丈夫だな・・・・・・じゃぁ、俺は行くから」 行って欲しくない、と美琴は思う。 もう少しだけ一緒にいたい、とも。 「お・・・・・・おい・・・・・・どうした?」 美琴は上条の腕を掴んでいた。 離れていって欲しくなかったからだ、もっと一緒にいたいと思ったから 体が勝手に動いて無意識に上条の腕を掴んだ。 そして、そのまま上条の体を引っ張って、上条の胸に飛び込んだ。 「お、おい!!御坂!!?」 あからさまに困惑する上条。 いきなり引っ張られたのもそうだが、中学生とはいえお年頃の女の子に抱きつかれたとなれば 男性ならば少しは焦ってしまうだろう。 「た、楽しみにしてるから」 「は、はぃ!?」 「あ、明日のこと楽しみにしてるから私をがっかりさせんじゃないわよ!馬鹿!」 「え・・・・・・あ、はぁ、その、なんと言うか、あ、あんまり期待されると逆に緊張してしまうのですが」 美琴はそこで、ぎゅぅっと更に力強く上条を抱きしめた。 体が更に密着するので美琴の柔らかい部分の感触が上条の体に伝わっていく。 「!!みさ、御坂さん!!?あの、あた、あたって!!?」 「・・・・・・」 美琴は離れない。 上条がしっかりと約束するまで離す気は無かった。 「ちょっとーー!?聞いてるんでせうか!?上条さん的には嬉しいんですが! いや、でもちょっとそろそろ離して欲しいと言うか、私めの理性が!崩壊するうううううう! 訳の分からないことを言っているが、上条は無理やり引き剥がそうともしない。 美琴は反応が面白くなって強く抱きしめたまま体を少し動かした。 当然、上条の体には当たっているものが動くのでさらに緊張たように体を固める。 「―――――――――!!!?あああああああああああ!分かった分かりました! 私上条当麻は、あした御坂美琴を必ず楽しませますのでもう離してくださいお願いします!」 「本当?」 「本当です!」 そこで美琴はようやく体を上条から離す。 上条の緊張は一気に解けたのか、呼吸がかなり荒く、腕をだらんとさせていた。 「じゃ、じゃあね、また明日」 「お、おう・・・・・・じゃあな」 上条と別れて常盤台へと向かう足取りは軽かった。 (アイツが誘ってくれた、初めてのアイツとのデート・・・・・・) 嬉しくて嬉しくて寮の部屋に着いて、ルームメイトに怪訝な顔をされても何も気にならなかった、 その夜はお気に入りの寝巻きを着ても、ぬいぐるみを抱きしめても なかなか寝付くことが出来なかった。 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある未来の・・・
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前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/一本の白き道 見知らぬ記憶 「……ん……うん……ムニャムニャ……」 「……ニャハハ……」 現在は深夜、上条当麻は夢の中である。 ここのところ美琴の教育がかなりキツい。毎日朝6時にモーニングコールが入り、早朝の勉強を開始。7時半には美琴が朝食を作りに来て(美琴は寮で済ませている)くれて、それを食べて8時過ぎには美琴お手製の弁当を持って寮を出て学校へ。 授業もしっかり受けて学校が終わった後、3時半にはいつもの自販機の前で待ち合わせてスーパーで買い物をしてから上条の寮へ戻って夕食まで勉強。 夕食も美琴が作ってくれて、それを一緒に食べた後、後片付けを上条がして、その間に美琴が勉強内容をチェック。その後厳しい指導が入って、門限時間に間に合うように美琴を寮まで送っていって、残っている課題をやってから風呂、就寝というスケジュールである。 休みの日は、朝から夜まで美琴が付きっきりで直接指導とオツムの弱い上条にはかなり厳しい毎日な訳だが、美琴と一緒に居られる事が何より。という事で充実した毎日を過ごしている。 そんなある日の事。 (・・・・あれ?・・・・美琴?・・・・なのか・・・・?) (ちょっと、雰囲気が違うな・・・・。何となく美鈴さんのような感じもあるけど・・・・やっぱり美琴だ) (何か・・・・スゴい大人っぽいな・・・・色っぽいって言うか・・・・) (え?・・・・わわわわわわわわわわわわ・・・・ききききききききききキスですか・・・・上条さんは幸せです・・・・) (あ、アレ?・・・・み、美琴?・・・・お、お、おおおおまっおまっおまっお前っ・・・・!!!!) (えええええええええええええええええええっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!) (そそそれっそれっそれっそそそそれって・・・・はだっはだっはだっ・・・・はだかぁ~~~~~?) (ままままままままままままままま待てッ!待てッ!!かかかかかかかかかかかかかか上条さんは“中学生に手を出したスゴい人の称号”はいらないのですのコトよ) (むむむむむむむむむむむむねっ!むねっ!!むねっが!!!・・・・胸がッ!!!!・・・・大きい!!!!) (えっ!?えっ!?えっ!?えっ!?えっ!?ええええええええええええええええええええええええええっ!?) (まっ、まっ、まっ、まっ、まままままままままままままさか・・・・) (うっ、うっ、うっ、うわああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・) 『ガバッ!!!』 「ハァーッハァーッハァーッハァーッハァーッ・・・・ンッ・・・・ハァーッハァーッハァーッ」 「ハァ・・・・お、お、お、おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおオレは何て夢を見てるんだあ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~」 今見た夢の内容に身悶えして苦しんでいる上条。 「男の子だねッ♪」 では済まないようだ。 病院から戻ってきたあの日、上条と美琴が誓いを立てたあの日から数週間が経とうとしていた。 この間は上条にとって目まぐるしいモノだった。 日曜日の一件から、美琴は上条に「せめて補習・追試を受けなくても済むようにしなさい」と言い出した。それはそうだろう。補習や追試があったのでは、上条と過ごせる時間が少なくなってしまう。それは美琴の望むところではない。 それに、この学園都市には絶対の尺度がある。レベル(強度)がそれだ。例え上条の右手が“神に貸し与えられた浄化の力”を備えた右手であろうと、上条当麻のレベルは“0”なのだ。 それに対し、御坂美琴は学園都市では一番有名なレベル“5”。この格差は如何ともし難い。二人にとっては大したことのない問題なのだが、周りはそう思ってくれない。 その事を一番肌で感じ取っていたのはやはり上条だった。だから上条は美琴を見習い努力する道を選んだ。『御坂美琴とその周りの世界を守るために、御坂美琴に相応しい男になる』と決意したのだ。そしてその為に美琴に協力を仰いだ。 美琴にしてみれば、そんな周りの声など気にする事はない。と言うつもりだったが、それ以上に上条の言葉が嬉しかった。その言葉を聞いた時は泣いた。泣きじゃくった。そして、改めて上条に惚れ直してしまった。旗男の面目躍如と言ったところなのだろうか。 とは言え、人はそう簡単には変われない。だから美琴は敢えてスパルタで上条を鍛える道を選び、上条もそれに応える日々を過ごし始めた。 コレはそんな時間の中の物語である。 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/一本の白き道
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とある秘密の合成写真【アイドルコラージュ】 コラ画像。それは写真やアニメの画像などを加工する事である。その中でもアイドルの顔写真を使用した物は、アイドルコラージュ…アイコラと呼ばれている。雑な切り貼りをしてネタとして楽しむ画像も多いが、グラビアアイドルの体に自分の好きなアイドルの顔を付け足して、『別の意味』で楽しむ方法も存在する。さて、何故そんな説明を冒頭でいきなりしたのかと疑問を持った方も多いだろう。実はここにいる青髪ピアス。何を隠そうアイコラの天才なのである。学園都市の最先端の科学技術と、彼のエロスへの底知れぬ探究心は、良い意味でも悪い意味でも相性が良い。「変態に技術を与えた結果がこれだよ!」の典型的な例である。結果的に彼は、その(どの?)界隈で名が知られるようになり、天賦夢路の時と同様、一部の熱狂的なファンからは尊敬の念を込めて、今でも『BUAU』と呼ばれているのだ。どうやら自分が作ったアイコラを、「欲しい!」と言う人に無料配布しているらしい。「と、いう訳や」「何が『と、いう訳』なんだよ…」そんなBUAUこと青髪から、放課後にパソコン室で呼び出された上条は、自慢なのか犯罪歴なのかよく分からない武勇伝を聞かされていた。「で? お前のアイコラ技術が凄いって事を延々聞かされた上条さんは、 一体どのようなリアクションを取ればよろしいので?」心の底からどうでもいい話に溜息交じりで相槌を打つ上条だが、青髪は見透かしたようにニヤリと笑う。「ふっふっふ…そんなん言うてもええんかな? これカミやんの為に特別に作ったのに」言いながら青髪は、教室の中のパソコンを一台立ち上げる。そして自分のアカウントのパスワードを入力して、フォルダーを開く。するとそこには…「っんな!? こ、これ…は…!」「せや! 御坂美琴ちゃんと富愚射華ちゃんのアイコラや!」ディスプレイに写し出されたのは、ぽっちゃり系グラドルの体に、上条のよく知る人物【みこと】の顔が貼り付けられたコラージュ写真だった。元がグラビア写真なだけに、着ているビキニはワンサイズ小さく、普段美琴が絶対に着ないであろうエロ水着姿はかなり新鮮だ。そして加工技術もまた青髪が自画自賛するだけの事はあり、言われなければ…いや、言われてもコラだと分からないくらいに自然だったのだ。正に「継ぎ目すらない美しいフォルムだろ?」である。「い、いつの間にこんなもん作ったんだよ!?」「授業中にちょこちょこっと」「お前…先生が知ったら泣くぞ…」「せやから、バレてもうたからカミやんを呼んだんやないかい」「…? どういう事だよ」 青髪は上条を呼び出した理由を説明しだした。つまり、授業中にコラ画像制作している【あそんでいる】事が学校側にバレてしまい、作った画像を全て消去して、反省文も書かないといけなくなったらしいのだ。しかしデータは消してもすでにプリントアウトしてしまった物はどうしようもない。かと言って自分で持っている訳にもいかないので、上条に処分【おすそわけ】を頼もうとしているのである。それを聞いた上条は、青髪に向かって一言こう言った。「お前バカだろ」「バ、バカとは何やバカとは! 他にも欲しがる人おったけど、カミやんの為に取っておいたんやぞ!?」プリプリ怒る青髪に対し、上条は腕を組みながら苦言を呈する。「あのなぁ…確かにムチムチしててエロいけど、よく考えて見ろよ。 美琴はここまで肉付きが良くねーんだよ! リアリティが足りねーよリアリティがっ!」…上条の言葉に、恐らく大半の方がこう思った事だろう。「ツッコむ場所そこじゃねーよ」と。しかし青髪はそんな上条をキョトンと見つめ、その後すぐにカラカラを笑い始めた。「ああ、そないな事かいな。心配せんでもええよ。 そういうリアル志向な人の為に、こんなんも作っといたから」すると青髪は、自分の鞄の中から一枚の写真を取り出す。これが先程の話に出ていた、すでにプリントアウトしてしまったコラ画像写真のようだ。それを見た瞬間上条は、顔を赤くしながら「ぶふっ!!?」と吹き出してしまった。その反応を見た青髪は、満足そうにニヤニヤ笑う。「や~、しかしカミやんもマニアックやねぇ。貧乳の方がええやなんて。 ま、ボクかて嫌いやないけど、大多数の人はリアルやなくてもええからて、 おっぱいの大きい方を選んでくで?」「い、いいいや! 違っ! そ、そういうんじゃなくてだなっ!」上条は慌てて否定するが、そんな事をしても何の意味もない事は目に見えている。そうなのだ。青髪が鞄から出したその写真は、先程と同じコラ画像を扱った物だったのだが、何箇所かだけ違う部分がある。しかしその違いは、先程の画像とは全く別物にする程の大きな違いなのだ。端的に言えば、ウエストと手足は細く、そしてバストは小さく修整されている。広報CMの美琴の体型を参考にしたらしく、それは誰がどこからどう見ても、御坂美琴がエロ水着を着ている写真にしか見えなかった。「まぁ、ええわ。ほんならボクは、これから秘密のフォルダーにデータ移さなアカンから、 カミやんはもう帰りぃ。渡した写真は先生に見つからんようにしてなー」どうやら素直にデータを消去する気がないらしい青髪は、上条に無理矢理(?)写真を押し付けると再びパソコンのディスプレイと向き直した。しかし何故か上条は、受け取った写真を青髪に返還する事もその場へ捨てる事もせず、自分の制服の内ポケットに、そっと仕舞い込むのだった。 ◇上条は変な緊張感を持ちながら、周りの様子をキョロキョロと警戒しつつ校門を出た。喉は渇き、心臓は速く脈打つ。しかし気分は高ぶっている。その様子はさながら、初めてエロ本を拾って帰る中学生男子の如くである。理由は勿論、内ポケットに挟んである例のコラ写真だ。こんな物を持っている事が誰かに知られたら、色んな意味でアウトとなる。特に上条は他の人よりも不幸な事態に陥りやすく、本人もそれを自覚している。だから警戒を怠る訳にはいかないのだ。だったら何故そんな危険物を持って帰るのか…それを言うのは野暮という物である。(う~…思わず持って来ちまったけど、これどうしよう…? 部屋ん中に、インデックスにもオティヌスにも見つからないような隠し場所ってあったっけ?)やはり、お持ち帰りする事は確定しているようだ。だが上条が不幸なのもまた事実。上条はこの直後、もっとも会ってはならない人物と遭遇する事となる。「ご、ごほん! ちょろっと~? な、何か今日も偶然会っちゃったわねー! まぁ多分何かの縁だろうし、い、一緒に帰らない?」背後から話しかけてきたのは、正真正銘本物の御坂美琴だった。まるで上条が学校から出てくるのを『待っていた』かのような偶然で、本日も彼女と出くわす。もうツッコむのもめんどいので、ここは偶然という事にしてほしい。さて、そんな美琴に声を掛けられた上条が、どんな反応を見せたのかと言えば。「だあああああああぁぁぁあぁしっ!!!!!」思いっきり大声を上げて背筋をビクゥッ!とさせたのだった。二人の役割がいつもの逆である。上条の言動で美琴が奇声を発するのはよくあるが、このパターンは珍しい。「ど、どうしたのよ急に!?」「ななななな何でもありませんですことよ!!? 上条さんは何もやましい物など持っておりませんですはい!!!」あからさまな挙動不審。何かを隠しているのは明白だ。美琴はジト目で上条を睨みながら、「怪しい…」と呟いた。対して上条は、滝のように冷や汗を流しながら目を泳がせている。美琴はずいっと一歩前に出て上条に詰め寄り、同時に問い詰め始めた。「アンタ何か隠してる事があるでしょ! 正直に白状しなさいよ!」「だだだだから何も隠してないってば!!! こ、ここ、これがウソついてる男の目に見えますか!!?」「そんな50mプールを全力で往復したみたいに泳いだ目を見せられても、 信じられる訳ないでしょ!? また変な事件に巻き込まれてんじゃないでしょうね!」確かにある種、事件に巻き込まれていると言えなくもないが、決して美琴が心配するような事ではない。しかしだからと言って詳しく説明する事は絶対に出来ないので、(美琴からすれば)意味深に口ごもってしまう上条。ますます怪しい。「アンタがどこかで戦う時は、私も一緒に連れてけって前にも言ったでしょ!? そりゃ…あんな化物達と戦うのに私なんか足手纏いになるのかも知れないけど…… でも! だからって私に黙って行こうとするなんて…そんなの、そんなのって!」瞳の中を薄っすらと潤ませ、何やら必死に訴えかける美琴だが、そのシリアスな雰囲気は残念ながら無駄骨である。だってそもそも上条は、これからどこかへ戦いに行く訳ではないから。美琴のコラ写真を持っている事を、美琴本人にバレないようにここを切り抜けるには、どうすればいいのかを考えているだけなのだから。しかし何度も言うようだが、それを本人に説明する訳にはいかない。それは秘密をバラしてしまうのと同義である。だが先程も説明した通り、彼は自他共に認める不幸体質だ。美琴に詰め寄られてアワアワをしている上条に、あろう事か、ここで絶対に起きてはならない不幸が発動する。 パサッ…突然、上条の胸ポケットから一枚の写真が落ちてきた。原因はポケットの底に開いている大きな穴である。上条は今ほど自分の不幸とマヌケさ加減を呪った事はないだろう。何故このタイミングなのか。そして何故ポケットに穴が開いている事に気付けなかったのか、と。「…? なに、これ?」「ああああああああああ!!! ちょ、それらめええええええええええ!!!!!」何だろうと思い、美琴はその写真を拾い上げる。上条も止めようとしたのだが、コンマ数秒遅かったようだ。哀れ写真は美琴の手の中である。そして写真を一目見た美琴は、見る見る内に顔を真っ赤にさせていく。美琴は先程とは全く違った涙を目に溜めながら、全く違った理由で上条を問い詰める。「なっ! なななな何なのよこの写真っ!!? 私こんなの撮った記憶が無いんですけど!!? てかそれ以前に、ど、どどどどうしてアンタがこんなの持ち歩いてんのよ!!? 私に黙ってどうするつもりだったのよこの写真っ!!!!!」「おおお、落ち着こうぜミコっちゃん!!! こ、これには深ぁ~いワケがありましてですね!!!」「こんなの見せられて落ち着けって方が無理でしょうがっ!!!!!」ごもっとも。上条は必死に頭を回転させて、何と言えば美琴を説得出来るのかを思案する。正直に話す…いや、駄目だ。火に油を注ぐような物だ。「実は御坂妹に水着を着て撮らせて貰った」と言って誤魔化す…いや、駄目だ。何故か殺されてしまうイメージが沸いてくる。「実は美琴に催眠術をかけて、その間に水着を着せて」…いや、駄目だ。それ犯罪だ。困った。何を言っても怒りを買ってしまうような気がする。しかし黙っている訳にもいかないだろう。ここは何か言わなければ、完全に変態扱いされてしまう。なので上条はとっさに。「い、いやこれ、その、今度、つ、『使おう』と思ってだな…」考えうる最低の言葉を残した。上条としては、別に何に使うかとか考えていた訳ではなかった。ただ無意味に持っているよりも、何かに使うと言った方が罰も軽減されると思ったのだ。理由がある【つかう】のなら仕方ない…美琴もそう思ってくれるのではないかと思ったのだ。しかしどうだろうか。エロ水着姿の美琴の写真を、『使う』というのは。使う用途など限られてくるのではないだろうか。冒頭でアイコラは『別の意味』で楽しむ方法も存在すると説明したが、正にそれなのではないか。そこに気付いた上条は、言った直後にハッとして、真っ青になった。「あっ!!? いや、ちょ待て美琴っ!!! 今のは間違い!!! そ、そういう意味で使うって言ったんじゃなくてだな!!!」しかし美琴は聞く耳を持たない。真っ青になった上条とは対照的に、ふにゃー寸前まで真っ赤になった美琴は。「そっ!!! そそそそそんなに使いたきゃ好きにすればいいじゃない!!!!! アアアアンタが私の写真でナニしようが私には全然関係なんて ないんだからああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」そう捨て台詞を吐きながら、美琴は脱兎の如く走り去ってしまった。自分が撮った記憶の無いその写真の正体を、上条に問いただすのも忘れるくらいに。一人ポツンと置いていかれた上条は、小さくなって行く美琴の背中を眺めながら、「……助かった…のか?」と一言漏らしたのだった。 ◇部屋に戻った美琴は、ルームメイトの白井に一つ質問をした。「……ねぇ、黒子。アンタ前に、やたらと際どいビキニ着てたじゃない…?」「ああ、皆で水着のモデルをした時ですの? わたくしとしては、アレはまだ大人しめなつもりだったのですが…」白井が着たのは大事な所がギリギリ見えない黒のマイクロビキニだったのだが、アレが大人しいなら普段は一体どんな水着を着ているのだろうか。「それで、それがどうかいたしましたの?」「うん…その、私も……ああいう水着とか…買ってみようかな~、なんて…」その言葉を聞いた白井は、一気に目をキラキラさせる。「まぁ! まぁまぁまぁ! お姉様もいよいよ目覚めましたのね!? いいですわよ~! わたしくがお姉様に合うアダルティな水着を選んで差し上げますの! んっふっふ…あの少女趣味全開だったお姉様がついに……ぐへへへへ!」相談する相手を間違えたかな、と少し後悔する美琴。「ですが一体どのようなご心境の変化ですの? それにまだ水着を慌てて選ぶような季節でもありませんが…」白井の疑問に美琴は赤面し、ベッドの布団をギュッと掴みながらこう答えた。「わ…私が、エ……エッチな水着を、着て、しゃ…写真に撮ったら……… アアア、アイ、アイツがその…つ…『使う』って…言うから…」瞬間、白井は空間移動で上条の下まで駆けつけた。結局の所、上条は何一つ助かってなどいなかったのである。
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前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/投稿者 「きぎキギキ」 キラ(4-879)氏 ▲ キラ(4-879)氏 小ネタ 不幸と書いて…… とあるバカップルの極秘レポート memories 1 三番目の記憶 memories 2 三番目の記憶 memories 3 最初の頼み 小ネタ 浴衣の彼女と惚れてる彼氏 memories 4 日常の記憶 memories 5 日常の記憶 memories 6 日常の記憶 memories 7 日常の記憶 memories 8 非日常の世界 memories 9 非日常の世界 memories 10 超電磁砲の記憶 fortissimo 1 とある超電磁砲の卒業式 memories 11 超電磁砲の記憶 fortissimo 2 とある超電磁砲の卒業式(番外編) memories 12 超電磁砲の記憶 小ネタ 12月のとある夜にて fortissimo 3 とある幻想殺しの同棲生活 memories 13 超電磁砲の記憶 memories 14 超電磁砲の記憶 fortissimo 4 とある恋人の登校風景 fortissimo 5 とある恋人の登校風景 fortissimo 6 とある超電磁砲の入学式 恋する少年の酔っ払い 小ネタ 勘違いと恥ずかしさ 4月1日と4月2日 selfish とある超電磁砲たちと幻想殺し 三日間の幻影の少女 fortissimo 7 とある恋人の夏物語 小ネタ 告白も不幸な上条さん fortissimo 8 とある恋人の夏物語 小ネタ 『馬鹿当麻』 fortissimo 9 とある恋人の夏物語 fortissimo 10 とある恋人の冬物語 風邪の美琴と看病の上条 人差し指 ▲ 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/投稿者 Back
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とある科学の執行部員 改訂版 はこちら。 第2章(3)「…美琴」上条が横になっている美琴の頭に右手を添えると何かが砕けるような音と共に、美琴は薄っすらと目を開けた。やはり魔術によって昏睡させられていたらしい。「…当麻」美琴は目を開けると大好きな上条の顔が最初に目に飛び込んできた。美琴は上条の太腿の上に膝枕の要領で頭を乗せていた。上条の顔には無数の傷があり、そして目には涙が浮かんでいる。「当麻、どうして泣いてるの?」美琴は上条の涙を拭うように上条の顔に手を差し伸べる。「悪い、俺の見通しが甘かったから美琴を戦闘に巻き込んじまった」上条と土御門の計算では少なくてもローマ正教の部隊は今日の深夜から明日の明け方に掛けて到着すると予想していた。しかし思ったよりもずっと早くローマ正教の部隊が到着してしまったため、上条と美琴が別れている間に美琴が襲われる形になったのだった。「私、当麻の役に立てたかな?」「ああ、もちろんだ。 垣根…他の『執行部』のチームのリーダーも驚いてたぞ。 初陣で魔術師を150人も倒すだなんて」「…当麻、私の方こそゴメンね」「どうして美琴が謝るんだよ?」「私、いつも自分のことばかりで当麻のことを知ろうともしなかった。 だから帰ったら当麻の話をいっぱい聞かせて欲しいの」「ああ」美琴は体を起こすと上条の体を見渡す。すると体中が傷だらけだった。「もしかして、私のせいで!?」「違うって、予想以上に手間取っただけだ」それは優しい嘘だった。そして美琴もそのことに気付いている。だから美琴は誓った、その優しい嘘を上条がつかなくていいよう強くなることを…「それに見た目は酷いかもしれないけど、骨にも異常はない。 さあ学園都市に帰ろう」上条は立ち上がると美琴に手を差し出す。美琴も上条の手を掴んで立ち上がった。そして二人は寄り添うようにして歩き始めるのだった。・・・ オルソラを無事にイギリス清教に預けると上条と美琴は『アイテム』の用意した車へ向かった。車に入ると麦野と運転手の男が上条たちを待っていた。「上条、もういいの? もう少しいちゃついてたって構わないのに」「これ以上、麦野たちに迷惑を掛けるわけにはいかないからな。 それより垣根は?」「アンタの戦闘の映像を見て、負けてられないって急いで帰っていったわ」「垣根はただでさえ強力な能力があるのに、格闘能力も高いからな。 まあそれについては麦野も同じだけど…」「女の子に対して、それは褒め言葉にならないんじゃない?」「ハハッ、悪い」すると会話に付いていけない美琴は上条に尋ねるように言った。「当麻、この人は?」「麦野沈利、美琴と同じレベル5で序列は第四位だ」「よろしくね、超電磁砲」「こちらこそ、よろしくお願いします」すると運転手の男が何か言いたそうに後部座席を見てきた。「浜面、アンタも何か言いたいことでもあるの?」「いや、俺も一応『執行部』の一員だから紹介してもらいたいなって…」「しょうがないわね、コイツの名前は浜面仕上。 ウチの新入りね、ただのスキルアウトにしておくには骨があるから私が拾ったのよ」「…浜面仕上、聞いたことがあるな。 そうだ駒場さんから聞いたんだ、駒場さんのとこで副リーダーをやってただろ?」「駒場さんを知ってるのか?」「ああ、駒場さんはスキルアウトって言っても 無能力者の自警団のようなことをやってるから、 偶に情報を提供してもらってたんだよ」すると麦野は何処か愉快そうに言った。「ウチのメンバーに滝壺っているでしょ。 コイツさ、その滝壺が魔術師に襲われてるのを拳一つで撃退したのよ。 まあ結局は滝壺に一目惚れしてただけなんだけどさ」「麦野、余計なこと言うなよ!!」しかし上条は特に笑うことなく、寧ろ浜面に親近感を持って言った。「恥ずかしがることねえじゃねえか。 好きな女の子のために戦う、全然恥じるようなことじゃねえよ」「良かったわね、浜面。 憧れの上条に認められたわよ」「憧れってどういう意味だ?」「コイツ、さっき上条の戦いの映像を見て上条みたいに強くなりたいって言ってたのよ」「わ、悪い、アンタみたいになりたいなんて、おこがましいよな?」「そんなことねえよ、チームは違うけど同じ『執行部』なんだ。 お互い頑張ろうぜ!!」「あ、ああ!!」そうして浜面が運転する車は学園都市へと向かうのだった。・・・ 上条と美琴は上条の部屋に戻ると上条の傷の手当を始めた。あちらこちらに内出血の痕と青痣が出来ていた。しかしそれ以上に目を引くのは体のあちらこちらにある古傷の多さだった。美琴は上条の背中の傷の手当を終えると、そのまま上条の背中に張り付くように体を預けた。「当麻は昔からこんな傷だらけになってまで、学園都市を守ってきたんだね」「まあ名誉の負傷ってやつだな」「ねえ、当麻は何のために戦うの?」「自分のためだろ」「でも当麻はいつか誰かのために…」「自分のためっていうのは、自分の周りの世界も含まれてる。 だから俺は自分の現実を守るために戦うんだ。 そして俺の世界の大半は美琴が占めている。 だから俺は美琴だけは危険な目に遭わせたくないんだよ。 今日みたいなことがあって、どの口が言ってるんだよって感じだけどな」「そんなことない、本当は当麻が私のために傷を負ったことだって知ってる。 でもね当麻がそうであるように、私の世界の大半も当麻で出来てるの。 だから当麻と一緒に私も戦いたい、その気持ちだけは分かって欲しい」「美琴…」「今のままじゃ当麻の足手まといになることは分かってる。 でも当麻に追いつけるように努力するから、お願いだから私を置いていかないで!!」美琴の最後の方の言葉は涙声になっていた。美琴の気持ちは分かる、しかし簡単に認めるわけにはいかなかった。「美琴の気持ちは分かってるつもりだ、 でも美琴を必要以上に危険に巻き込みたくないんだよ」「当麻の気持ちは嬉しい、でも私は絶対に諦めない。 必ず当麻の隣で一緒に戦ってみせる」こうなってはテコでも美琴が退かないことは分かっていた。そういう美琴だから好きになったのだし、守ってあげたいと思ったのだから。「じゃあ約束できるか? 何があっても単独行動はしない、俺の傍から離れないって」「約束する」「それじゃあ今日から俺達は公私に渡っての正真正銘のパートナーだ。 今日のような徹は二度と踏まない、 例え何があろうとも俺は美琴のことを守って見せるから」上条は自分にそう誓うと守るべきものの温もりを忘れぬよう、美琴を抱きしめ、美琴の唇に自分の唇を重ねた。そして上条は自分の幼少期と美琴に出会うまで過ごしてきた日々について語った。そのまま泊まりたいと言う美琴を宥め、寮まで送っていくと、傷ついた体を癒すように上条は深い眠りに就くのだった。
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前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/幸福へのプロローグ 第十一話 クリスマス(前編) ―12月24日1時過ぎ 上条の寮 部屋の前― 美琴(…1時間弱前…か) 約束の時間より大幅に早く、美琴が到着した。 美琴(この前から、一体何がどうなってるのか…今日で全部聞かせてもらうわよ、当麻) 心の中で呟きながら、追いかけっこ時代を彷彿とさせる表情で鍵を開け、ドアノブを回す。 美琴「当麻ぁ~や・く・そ・く・ど・お・り来たわよ…って……あれ?」 ドアを開けて見える範囲に当麻の姿がない。しかし電気は点けっぱなし。 美琴「どこにいるのよ当麻ぁ……え?」 奥に居るのかなと探すと、案の定、ベッド脇のスペースで寝ていた。 上条当麻お手製のゲコ太人形に寄り掛かった状態で。 美琴「え…?…もしかして…これって…////」 約半年前、彼の想いを彼本人の口から聞いた時と同様に赤面し震えだす美琴。 当麻「ふぁぁぁあぁぁあぁ…あれ?」 遅れて、当麻が目を覚まし、美琴を目撃する。 美琴「と…当、麻?」 当麻「何だ? 美琴」 ここから少し長くなるので略記するが、今この状況と先日までの当麻の言動について 1つ1つ確認を迫る美琴に対し、上条は漏れなく説明をした。 ゲコ太人形をプレゼントしようとしたこと、費用面の都合で手作りになったこと、 道具と材料が自力で調達出来ず吹寄と姫神と土御門兄妹に協力してもらってたこと、 それでも間に合うかどうか超ギリギリで慌てて、ここ2日は徹夜だったこと、などなど。 当麻「んで、やっとの事で昨夜最後の背中の縫い合わせを端までやったところで……」 美琴は1つ1つ聞くたびに再び顔を赤くした。彼に少しでも疑念を持ったことへの恥ずかしさと こんなにも頑張ってプレゼントを手作ってくれたことへの嬉しさとでもう最高に顔を赤く… 当麻「……あ」 美琴「?」 当麻「…端まで縫い合わせて安心しちまって、最後の“玉止め”が終わってなかった」 やっぱり上条は上条だった。 針を持ってない方の手で頭を抱える上条。そりゃ人形の場合は他と違って玉止めを目立たないように 内側にするのはとても難しい作業。しかし美琴はふふっと微笑み、上条の横に座ると… 美琴「じゃあ、私がこうしてるから、当麻は針をここに刺してここから出せる?」 当麻「お、おう」 美琴「そしたら、この今針を出したところで…うん、そうそう、よし♪」 美琴センセーの導きにより、見事最終作業まで完了し、ゲコ太人形は完成した。 しかも、針を動かしたのは上条なので、100%上条手作りなのはきちんと維持されたままである。 当麻「…では、メリークリスマス、美琴♪」 多少願望とはズレたが、ほとんど予定通りゲコ太人形を美琴にプレゼント出来た。 大喜びでゲコ太人形と抱き合う美琴。 先月セブンスミストでゲコ太人形たちと戯れていた時も可愛かったが それにも増して凄く可愛い笑顔でゲコ太人形を抱きしめている。 その可愛さに上条も思わず体が動いて… グゥ~~~~~ 当麻&美琴「「!!!!!」」 腹の虫の音で二人は顔を見合わせる。音の主は当麻だった。 当麻「…そう言やぁ、今朝からずっと食ってなかったんだっけ」 くすっと笑う美琴。よし、こんなに頑張ってくれた彼のために、今度は私が頑張る番だ♪ 美琴「よーし、じゃあ私がささっと材料買ってきて作ってあげるわ♪ ちょうど忘れ物も取りに行きたいところだったし」 3~40分後、笑顔で帰ってきた美琴。まず食材を置き、エプロンの入った袋を持って、 美琴「んじゃ、作る前にちょろっと着替え済ませるわね♪ …覗かないでね?」 と言い、脱衣所の扉を閉めた。 ……ん?“着替え”? エプロンだけなら服の上からだからその必要は…? と上条が数分かかってやっと気付いた後、扉が開いた。その先には…… 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/幸福へのプロローグ
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前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/投稿者 「AaAa」 auau(7-270)氏 Aサイド ◆kxkZl9D8TU氏 ▲ auau(7-270)氏 とある未来の・・・ 1 プロローグ とある未来の・・・ 2 1.訪問者 とある未来の・・・ 3 1.訪問者 とある未来の・・・ 4 2.初めて とある未来の・・・ 5 3.惹き合い とある未来の・・・ 5 3.惹き合い とある未来の・・・ 6 4.頼み事 とある未来の・・・ 6 4.頼み事 とある未来の・・・ 7 5.最終日 とある未来の・・・ 7 5.最終日 小ネタ 超電磁砲五巻特装版裏表紙にて とある未来の・・・ 8 5.最終日 とある未来の・・・ 9 5.最終日 とある未来の・・・ 10 エピローグ 雨のち曇り のち晴れ 1 前編 のち晴れ 2 中編 告白の練習 ▲ Aサイド ◆kxkZl9D8TU氏 小ネタ いちゃいちゃするのを愛でる場所 コトバ、アソビ。キモチ、・・・ たまには立ち位置を変えて 美琴の不幸な初体験 嘘から出た美琴 ▲ 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/投稿者 Back